Too late
「その人と、もうそんなに仲いいんだね。ナンパしたってのは嘘なの?」
「先生にだけは言いますけど、私と彼、実は10年来の幼馴染みなんです」
本当は誰にも言うつもりなかった事を、誤解を解くために教えた。
「じゃあ、あれが初対面じゃなかったってこと?」
「そうです。彼とは職場では関わらないつもりでいたんですけど、あんなアクシデントが起きちゃって」
「偶然? すごいね、なんかドラマみたい」
「先生もあれ、見てました?」
「うん、見てたよ」
やはり見られていた。
先生って他人のそういうことに興味はない人だ。
でもあの時すでに私に気があったならばあんな場面、スルーするはずもない。
にしても、私がシウをナンパしたって噂は他の誰かが発信なわけで、噂の出所が気になる。
「ただ、初対面にしてはあの男の人が馴れ馴れしいっていうか......まあ、格好いいって自覚はあるだろうし、女性にはあんな感じで接するんだなーって見てた。どっちかというとユリがナンパされてるみたいだったし」
シウが盛大な勘違いをされていて笑いが込み上げる。
見た目のせいでよく変な勘違いをされていて不憫に思うこともあるけど、ちょっと面白い。
もし私も彼と知り合いじゃなければ、いけすかない野郎だと思うだろうしなんなら一番苦手なタイプかも。
見た目が整いすぎてるのも、それを武器にお金を稼ぐ場合を除けばデメリットのほうが多い。
「あの人、かっこいいって自覚あるんですかね?」
「あるに決まってんじゃん。みんなざわついてたし気づかないわけないよ」
「そっか......今度聞いてみよっ」
シウ、どんな反応するんだろう。
どうせならチョルスたちと一緒にいるときに聞こう。
「なぁ、ユリ」
「んー?」
「あの人とはただの幼馴染みなんだよね?」
「はい。もちろん」
あまりにも素早く答えた。
間髪入れぬ即答で先生が何かを悟らないかと肝を冷やす。
「よかった。あの人と何かあるなら......さすがに諦めないとなって......」
その弱腰、好きじゃない。
「なにかあるなら、諦めるんですか?」
「えっ、うん......だってAJなんてうちの何倍も大きいじゃん」
その程度の気持ちってことですね。
喉元まで出かかった言葉を飲み込む。
もっと強引に愛してくれたっていいのにな。
意気地無し。
平常心を取り戻す。
頭の容量に余暇を持たせた私は、携帯は耳元でそのままに、テレビ画面に目をやった。
舞台は空港だ。
男の人が空港内を駆け巡り、辺りをぐるぐる見回しながら誰かを探している様子。
”ミヨン!”
彼が叫ぶのは主人公の名。
きっと、あのヒロインが留学だかなんだかで海外に行くことになって、見送りに来たけど間に合わなかった、という描写だ。
ドラマ終了まで残り15分。
おそらく数十秒後には、飛び立ったはずのヒロインが実は一便遅らせていて「もう、遅いよ」と拗ねた表情で彼の前に姿を現わす。
空港のど真ん中でのキスシーンで視聴者を喜ばせたあと、“数年後”のテロップと共におまけの幸せな生活シーンが流れるはずだ。
ソファーに頭をだらりと預けて、ドラマのラストを見届けることにした。
「でも、正直何言われたって今さら諦めきれない」
ドクン。
胸が痛いほどに高鳴る。
「先生にだけは言いますけど、私と彼、実は10年来の幼馴染みなんです」
本当は誰にも言うつもりなかった事を、誤解を解くために教えた。
「じゃあ、あれが初対面じゃなかったってこと?」
「そうです。彼とは職場では関わらないつもりでいたんですけど、あんなアクシデントが起きちゃって」
「偶然? すごいね、なんかドラマみたい」
「先生もあれ、見てました?」
「うん、見てたよ」
やはり見られていた。
先生って他人のそういうことに興味はない人だ。
でもあの時すでに私に気があったならばあんな場面、スルーするはずもない。
にしても、私がシウをナンパしたって噂は他の誰かが発信なわけで、噂の出所が気になる。
「ただ、初対面にしてはあの男の人が馴れ馴れしいっていうか......まあ、格好いいって自覚はあるだろうし、女性にはあんな感じで接するんだなーって見てた。どっちかというとユリがナンパされてるみたいだったし」
シウが盛大な勘違いをされていて笑いが込み上げる。
見た目のせいでよく変な勘違いをされていて不憫に思うこともあるけど、ちょっと面白い。
もし私も彼と知り合いじゃなければ、いけすかない野郎だと思うだろうしなんなら一番苦手なタイプかも。
見た目が整いすぎてるのも、それを武器にお金を稼ぐ場合を除けばデメリットのほうが多い。
「あの人、かっこいいって自覚あるんですかね?」
「あるに決まってんじゃん。みんなざわついてたし気づかないわけないよ」
「そっか......今度聞いてみよっ」
シウ、どんな反応するんだろう。
どうせならチョルスたちと一緒にいるときに聞こう。
「なぁ、ユリ」
「んー?」
「あの人とはただの幼馴染みなんだよね?」
「はい。もちろん」
あまりにも素早く答えた。
間髪入れぬ即答で先生が何かを悟らないかと肝を冷やす。
「よかった。あの人と何かあるなら......さすがに諦めないとなって......」
その弱腰、好きじゃない。
「なにかあるなら、諦めるんですか?」
「えっ、うん......だってAJなんてうちの何倍も大きいじゃん」
その程度の気持ちってことですね。
喉元まで出かかった言葉を飲み込む。
もっと強引に愛してくれたっていいのにな。
意気地無し。
平常心を取り戻す。
頭の容量に余暇を持たせた私は、携帯は耳元でそのままに、テレビ画面に目をやった。
舞台は空港だ。
男の人が空港内を駆け巡り、辺りをぐるぐる見回しながら誰かを探している様子。
”ミヨン!”
彼が叫ぶのは主人公の名。
きっと、あのヒロインが留学だかなんだかで海外に行くことになって、見送りに来たけど間に合わなかった、という描写だ。
ドラマ終了まで残り15分。
おそらく数十秒後には、飛び立ったはずのヒロインが実は一便遅らせていて「もう、遅いよ」と拗ねた表情で彼の前に姿を現わす。
空港のど真ん中でのキスシーンで視聴者を喜ばせたあと、“数年後”のテロップと共におまけの幸せな生活シーンが流れるはずだ。
ソファーに頭をだらりと預けて、ドラマのラストを見届けることにした。
「でも、正直何言われたって今さら諦めきれない」
ドクン。
胸が痛いほどに高鳴る。