Too late
一瞬固まった空気。
誰かがばたばたと駆けてくる足音とドア越しにも遠くからする声が、それを崩してくれた。
ノックもなくドアが開く音がすると、目の前には息を切らした男の子が現れた。
「お母さ......」
彼は私を見て目を丸くする。
「あっ、もしかして」
私の後ろに立っていたスジオンニはその男の子に寄り、肩を持った。
「そう! この子が息子のテヒなの。ほら、ご挨拶して」
中学校3年生だと聞いたが、身長が高く大人っぽい。
最近の中学生ってこんなもんなのだろうか。
オンニ譲りの美形だ。
うちの事務所にいてもおかしくないくらい整っている子で驚いた。
「テヒくん、はじめまして!」
立ち上がって彼に1歩、歩み寄ると何故だか後退りされてしまった。
慣れ慣れしすぎたかしら。
彼は視線を迷わせて、恥ずかしそうにしている。
行動を見るとやはり中学生だ。
「すっげー、芸能人だー。めちゃくちゃ可愛いっすね」
面と向かって褒められるとなんだか照れ臭い。
下心でもお世辞でもない言葉はグッとくる。
澄んだ瞳でまじまじと見つめられて、私の方が目を逸らしてしまった。
「今スジオンニにヘアメイクしてもらったから、そのお陰かも」
「や~ん! かわいい! 癒されるからうちにずっと居てほしい!」
オンニの勢いに圧倒される。
「テヒにユリちゃんのことは話してたのよ」
「シウヒョンすっごいなぁ......本当に芸能人と知り合いなんだ......」
「テヒ、ユリちゃんのこと好きになっちゃ駄目だからね?」
大胆な発言が私たち2人を慌てさせるた。
揃って手を横に振り否定する。
「有り得ないですよ~4つも上だし」
「さすがにそれはぁ......」
テヒくんは顔を赤らめる。
思春期が深刻だと聞いたけど、素直で可愛らしい子じゃん。
「シウと仲良くしてあげてね? あの人、なんだかんだで年下の面倒見るのは好きなはずだから」
「あっ、はい! 仲良くします!」
「ねぇユリちゃん? せっかくそんなにかわいくセットしたんだしシウくんにも見せて来てよ」
その場から全身鏡で自分の姿を確認できる。
ワンピースに合わせて髪はゆるく巻かれてハーフアップ。
頬はミルキーピンクに染まり、唇は艶っぽくアイメイクは控えめだが睫毛がくるんと上がっている。
多幸感を纏っていて、自分でもこれはかわいいと思った。
いつもの担当ヘアメイクさんとは全く違う仕上がり、新鮮で心ときめく。
会ったばかりで私の顔を知り尽くしているわけでもない人が、短時間でこれほどうまく仕上げたその技量に驚く。
お仕事を続けているならばオンニに頼みたいくらいだ。
コラボ活動以降はフェミニンなヘアメイクスタイルに挑戦している。
モニターチェックをしても違和感を感じて新しいスタイルに見慣れず過ごしたが今日やっと正解をみつけた気分だ。
あとでセルフィーを撮って、担当メイクさんに見せよう。
ヒールを大いにぐらつかせながら、リズミカルに早足で階段を駆け昇る。
ノックするも返事はない。
2回ノックしても何の反応もなかったためゆっくりとドアを開けた。
話し声がわずかに聞こえる。
ひょっこりとドアの隙間から顔を出した。
部屋を見渡すもシウの姿はない。
仕切られた壁の先で電話をしているらしい。
通話中の彼がビックリしてしまわないように、ここにいますよ、と言わんばかりにヒールをコツコツと鳴らしながら歩いた。
書斎の先の壁まで行くと、彼の様子を覗いた。
窓に向かって外を見ながら電話している。
白いシャツを腕まくりしていて、ズボンのポケットに片手を突っ込んでいる立ち姿はお世辞抜きに格好いい。
シウが会社にいると目立つだろうなぁ......
うっとりと眺めていたら、気配に気づいた彼が振り向いた。
一瞬にして顔つきを穏やかにする。
私から視線を外さないまま、通話相手に「すみません。またかけ直します」と言って、携帯をベッドにぽんと放る。
誰かがばたばたと駆けてくる足音とドア越しにも遠くからする声が、それを崩してくれた。
ノックもなくドアが開く音がすると、目の前には息を切らした男の子が現れた。
「お母さ......」
彼は私を見て目を丸くする。
「あっ、もしかして」
私の後ろに立っていたスジオンニはその男の子に寄り、肩を持った。
「そう! この子が息子のテヒなの。ほら、ご挨拶して」
中学校3年生だと聞いたが、身長が高く大人っぽい。
最近の中学生ってこんなもんなのだろうか。
オンニ譲りの美形だ。
うちの事務所にいてもおかしくないくらい整っている子で驚いた。
「テヒくん、はじめまして!」
立ち上がって彼に1歩、歩み寄ると何故だか後退りされてしまった。
慣れ慣れしすぎたかしら。
彼は視線を迷わせて、恥ずかしそうにしている。
行動を見るとやはり中学生だ。
「すっげー、芸能人だー。めちゃくちゃ可愛いっすね」
面と向かって褒められるとなんだか照れ臭い。
下心でもお世辞でもない言葉はグッとくる。
澄んだ瞳でまじまじと見つめられて、私の方が目を逸らしてしまった。
「今スジオンニにヘアメイクしてもらったから、そのお陰かも」
「や~ん! かわいい! 癒されるからうちにずっと居てほしい!」
オンニの勢いに圧倒される。
「テヒにユリちゃんのことは話してたのよ」
「シウヒョンすっごいなぁ......本当に芸能人と知り合いなんだ......」
「テヒ、ユリちゃんのこと好きになっちゃ駄目だからね?」
大胆な発言が私たち2人を慌てさせるた。
揃って手を横に振り否定する。
「有り得ないですよ~4つも上だし」
「さすがにそれはぁ......」
テヒくんは顔を赤らめる。
思春期が深刻だと聞いたけど、素直で可愛らしい子じゃん。
「シウと仲良くしてあげてね? あの人、なんだかんだで年下の面倒見るのは好きなはずだから」
「あっ、はい! 仲良くします!」
「ねぇユリちゃん? せっかくそんなにかわいくセットしたんだしシウくんにも見せて来てよ」
その場から全身鏡で自分の姿を確認できる。
ワンピースに合わせて髪はゆるく巻かれてハーフアップ。
頬はミルキーピンクに染まり、唇は艶っぽくアイメイクは控えめだが睫毛がくるんと上がっている。
多幸感を纏っていて、自分でもこれはかわいいと思った。
いつもの担当ヘアメイクさんとは全く違う仕上がり、新鮮で心ときめく。
会ったばかりで私の顔を知り尽くしているわけでもない人が、短時間でこれほどうまく仕上げたその技量に驚く。
お仕事を続けているならばオンニに頼みたいくらいだ。
コラボ活動以降はフェミニンなヘアメイクスタイルに挑戦している。
モニターチェックをしても違和感を感じて新しいスタイルに見慣れず過ごしたが今日やっと正解をみつけた気分だ。
あとでセルフィーを撮って、担当メイクさんに見せよう。
ヒールを大いにぐらつかせながら、リズミカルに早足で階段を駆け昇る。
ノックするも返事はない。
2回ノックしても何の反応もなかったためゆっくりとドアを開けた。
話し声がわずかに聞こえる。
ひょっこりとドアの隙間から顔を出した。
部屋を見渡すもシウの姿はない。
仕切られた壁の先で電話をしているらしい。
通話中の彼がビックリしてしまわないように、ここにいますよ、と言わんばかりにヒールをコツコツと鳴らしながら歩いた。
書斎の先の壁まで行くと、彼の様子を覗いた。
窓に向かって外を見ながら電話している。
白いシャツを腕まくりしていて、ズボンのポケットに片手を突っ込んでいる立ち姿はお世辞抜きに格好いい。
シウが会社にいると目立つだろうなぁ......
うっとりと眺めていたら、気配に気づいた彼が振り向いた。
一瞬にして顔つきを穏やかにする。
私から視線を外さないまま、通話相手に「すみません。またかけ直します」と言って、携帯をベッドにぽんと放る。