Too late
彼のそばに寄った。
窓の外は夕暮れ時で空がオレンジ色だ。
西陽が部屋を照らす。
シウとの身長差が、高いヒールのせいで普段とは違う。
彼に腰を抱かれて密着する。
いつもなら首を斜め45度に上げるのに、今日はちょっと見上げただけで目が合う。
会話もなく視線を交わらせて数呼吸、次第に彼は瞳に欲望を宿らせる。
迫りくる体を止めようと、咄嗟に胸板を押し返した。
綺麗な顔を一気に曇らせて、ため息をついた。
緊迫感が解ける。
私、わかってた。
彼をこうさせちゃうことくらい、予想ついていたはずだ。
自らこの部屋に来て、ある意味望んでたんじゃないの。
内心、彼から求められるのが心地いいんだ。
女として見られたくて、彼から求められるのが嫌じゃなくて、
変に彼を刺激して相手がその気になったら自分はさっと引く。
私はあの時から本当に何にも変わってないんだ。
「やっぱやめよう」
密着していた体を離す。
2人きりでも、もう何も起こらない。
そんな自信があったからここに来たのに、いざ何も起こらないとガッカリしちゃうんだ。
私が一度拒んでも、それでも我慢できなくて迫ってきてほしいのに。
“幼馴染みでいたい”
それもきっといい子ちゃんぶりたい上辺だけの気持ちで、根底にある欲求はずっと変わってない。
「ちゃんと付き合ってからにする」
「............」
「まだ、あいつのこと待ってんの?」
決して口に出さないその名前。
シウは、あの人のことを良く思っていない、というか嫌っている。
2人は血の繋がった兄弟。
なんだかんだで実際は心配していると思っていたがそんなこともないようだ。
あの人の失踪を自業自得の一言で片付ける。
無情。
失踪が原因で私と別れることになったから、それを理由にあの人のことをよく思っていないのだと認識していた。
しかしこの前、放った一言。
あれから察するにシウは、私があの人に幼馴染み以上の感情を抱いていたことを知っている。
一体いつから私の気持ちを知ってたの?
シウがあの人の話題を出す度に顔を歪めて滲ませていた嫌悪感。
正体は深い嫉妬心だとようやく理解した。
心底嫌っている。
もしもソヌが戻ってきてくれても、元には戻れないんじゃなかろうか。
「ずっとそばにいるのはあいつじゃなくて俺だよ」
背負っていた責任に、もっと大きな重石を乗せられた。
息苦しい。
私は目の前の彼に応えることでその罪を償えるのだろうか。
「シウには、感謝してるよ......離れないでいてくれて」
「いつまで待てばいいの?」
窓の外は夕暮れ時で空がオレンジ色だ。
西陽が部屋を照らす。
シウとの身長差が、高いヒールのせいで普段とは違う。
彼に腰を抱かれて密着する。
いつもなら首を斜め45度に上げるのに、今日はちょっと見上げただけで目が合う。
会話もなく視線を交わらせて数呼吸、次第に彼は瞳に欲望を宿らせる。
迫りくる体を止めようと、咄嗟に胸板を押し返した。
綺麗な顔を一気に曇らせて、ため息をついた。
緊迫感が解ける。
私、わかってた。
彼をこうさせちゃうことくらい、予想ついていたはずだ。
自らこの部屋に来て、ある意味望んでたんじゃないの。
内心、彼から求められるのが心地いいんだ。
女として見られたくて、彼から求められるのが嫌じゃなくて、
変に彼を刺激して相手がその気になったら自分はさっと引く。
私はあの時から本当に何にも変わってないんだ。
「やっぱやめよう」
密着していた体を離す。
2人きりでも、もう何も起こらない。
そんな自信があったからここに来たのに、いざ何も起こらないとガッカリしちゃうんだ。
私が一度拒んでも、それでも我慢できなくて迫ってきてほしいのに。
“幼馴染みでいたい”
それもきっといい子ちゃんぶりたい上辺だけの気持ちで、根底にある欲求はずっと変わってない。
「ちゃんと付き合ってからにする」
「............」
「まだ、あいつのこと待ってんの?」
決して口に出さないその名前。
シウは、あの人のことを良く思っていない、というか嫌っている。
2人は血の繋がった兄弟。
なんだかんだで実際は心配していると思っていたがそんなこともないようだ。
あの人の失踪を自業自得の一言で片付ける。
無情。
失踪が原因で私と別れることになったから、それを理由にあの人のことをよく思っていないのだと認識していた。
しかしこの前、放った一言。
あれから察するにシウは、私があの人に幼馴染み以上の感情を抱いていたことを知っている。
一体いつから私の気持ちを知ってたの?
シウがあの人の話題を出す度に顔を歪めて滲ませていた嫌悪感。
正体は深い嫉妬心だとようやく理解した。
心底嫌っている。
もしもソヌが戻ってきてくれても、元には戻れないんじゃなかろうか。
「ずっとそばにいるのはあいつじゃなくて俺だよ」
背負っていた責任に、もっと大きな重石を乗せられた。
息苦しい。
私は目の前の彼に応えることでその罪を償えるのだろうか。
「シウには、感謝してるよ......離れないでいてくれて」
「いつまで待てばいいの?」