推しと恋しちゃだめですか?
「どうしてこいつと……」
ってなわけで。
やっぱり3人でやることに。
私がストップウォッチを持つ。

OKとサインを出した。
すぐに走り出す土戸くん。

からだがラインを超えた瞬間、ストップウォッチをとめる。
「6.9だね…!」
「もうちょっと走れると思ったのに…」

次はゆうとくん。
タイムは……。
「6.8…!!」
「す、すごいすごいっ…!!」

「だろ?」
と得意げなゆうとくん。
次は私だ…!

「じゃあ行ってくる!」
ようし!頑張るぞ!!

「いいよ〜!!」
土戸くんの声。
その瞬間私は足を踏み出す。
「え…?」
だけど、私のからだは傾いた。
誰かに背中を押された感触だ。

「……!!」
「すみれ!?」
そのまま私のからだは傾いて倒れる――と思ったけど、誰かに抱きとめられた。


「ゆ、うとくん…?」
「大丈夫か…!?」
「う、うん」

その後遅れて土戸くんが走ってくる。
「すみれ…!?大丈夫!?」

「う、うん、平気…」
そう言って立ち上がろうとしたけど、すぐにめまいがしてふらついてしまう。
またもゆうとくんに抱きとめられる。

「…平気って、どこがだよ」
つぶやくように言って、ゆうとくんは保健室に連れて行こうとする。

からだを支えてもらうのは申し訳なくて、あわてて言葉を並べる。
「あ、大丈夫だから…!連れて行ってもらえるだけでいい――」
「うるせぇ」

その言葉の後、私のからだは宙に浮いた。
背中に手、足に手。
こ、これって、お姫様抱っこ!?
「ゆ、ゆうとくん!?私、重いし…!!」
「……」
そのまま無言のまま、彼と私は校庭をあとにした。



◇◇◇◇◇◇
「ん…」
目を開けるとそこは保健室のベッドだった。
あ、私寝ちゃってたんだ。
「…えっ…!?」

なんと、ゆうとくんがベッドにもたれかかるようにして寝ている!!
服も体操服だし、腕をベッドにのせたままだ。

いつもクールだけど、寝顔は子どもみたいに優しい。
なんだか自然に笑みがこぼれて、ゆうとくんの頭を撫でた。

「んん…?」
や、ヤバい、ゆうとくん起きちゃうっ…!?

私は咄嗟に寝たフリをする。
がさがさとシーツの擦れる音がして、起きたんだなぁと察した。
あれ?なんだかゆうとくんが近づいてきているような……。

気がつけば鼻と鼻がくっつく距離にいて、私は汗が吹き出しそうだ。

はやくどっかに行ってー!!
なんて私の願いは叶うことなく。


ちゅっ、と可愛らしいリップ音が部屋に響いた。
……え?
「ミドリばっか相手するな」
完全に私に聞こえていないと思ったみたいで、意味がわからないセリフを投げ捨てる。
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