推しと恋しちゃだめですか?
「ミドリばっか相手するな」
よ、よくわからない、んだけど。
パチリ、私は目を開ける。

「っ、起きたか…」
ゆうとくんの顔。
さっき、唇にキスしたよね…?

「あのさ」
私はゆうとくんを呼んだ。
「さっき、キスした…よね?」
「……は…っ!?」

ひどく動揺している。
「いや、その、なんというか……。俺一応アイドルだからさ、女から言い寄られるんだよ」
「だから仮で彼女してほしいんだ」
あ、なるほど…。

「でも、それはさっきキスした理由じゃないよね?」

「っ……」
ゆうとくんの顔が歪んだ。
下唇を噛んでいる。

「それは、その。つい…」
つい…?
「寝ぼけてやっちゃったんだよ、だけど仮でも彼女になってほしいってのは本当だ」

彼女…?
「でも、アイドルって、彼女いたら炎上するんじゃ…」
だって、この学校で公表するんでしょ?
そしたら、外部に情報が漏れるかも…。


それに、女優とか俳優はまだしも、今人気のアイドルって、ネットで拡散されるんじゃ…!?

「大丈夫だ、この学校は芸能人やアイドルがたくさんいる。ここらへんの情報ガードも硬い」

で、でも…。と言いたげな私に近づくゆうとくん。
「万が一情報が漏れたとしても、漏らした相手の秘密握ってばら撒くし」

ひ、ひええ…。
「ってことで、良いよな?」
もう断れないよ…。
「っ、もうわかった…!」

い、言ってしまった…。
「ありがとう。あと、さっきはキスしてごめん…」
「それは許してない…っ」

「え?」

だって…。
「ファースト、キスだったし…」
ゆうとくんが凍りついた。
あれ、私変なこと言った…?

でも、ファーストキスだったのは確かだし…。

「そうだったのか…」
そう返事をする彼の耳まで赤い。
照れてる…!?

今更…っ!?
「それは本当にごめん…!!じゃあ、先行くから、安静にしとけ…」

そう言って、ゆうとくんはカーテンで仕切られた部屋を出ていった。

「び、びっくりしちゃった……」

好きな人にファーストキス奪われるとか、なんか、少女漫画みたい…。
でも、ちょっと強引すぎだよ…。

しかも彼女…。
「私本当に死ぬかも…」

その後、熱が上がって風邪をひいてしまった…。
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