推しと恋しちゃだめですか?

恋人なんでね

side 佐木ゆうと

や、やっちまった…。
授業サボって寝てしまった?
いやそれもやってしまったけど…。

す、好きなやつにキスしてしまった…。
今は昼休みで、学食でサンドイッチとコーヒー牛乳(紙のパックのやつ)を買った。
しかも、ファーストキス!?

考えて、恥ずすぎて持っていた牛乳パックを潰してしまった。
残っていた牛乳が吹き出して空き教室よ床が汚れたけど、気にしてる余裕もない。

……まぁファーストキスなのは俺もだけど。

なんとなく現実逃避しようとサンドイッチを片手で頬張るけど、キスのことばっかでサンドイッチの味なんかわからなかった。

そ、それにあいつ唇柔らか――って、これじゃあ変態思考じゃねぇか…!!

さらにパックを潰してしまったけど、もう中身もなく、ただ空気の出る音しかしなかった。

寝ぼけてキスしたんじゃなくて、本当は可愛いすぎてしただけなんだけどな…。

そしてライバルのミドリのガードが硬すぎる。
完全に俺を排除しようとしてるな…。

「ふざけんなよ…」
口に残ったサンドイッチを噛み砕いて、舌打ちした。

そのまま、2個目を頬張ってほぼ噛まずに飲み込む。

がららららっ。
「ん」

空き教室の扉が開いて、視線を向ける。
女子だったら逃げよ…。

俺はアイドルの時も女が苦手だからクールキャラで通してる。

ミドリみたいに愛想振りまけねぇんだよ。
「あれ、ゆうとじゃん」

なんだ、ミドリか。
ミドリだからいいか。
その気持ちを察したのか、ミドリは教室に入ってくる。
そして、俺の席の隣に座った。

「何食ってんのって、…床汚っ!!」
潰れたパック牛乳をみて、あぁ…、とつぶやくミドリ。

「悩んでんの?」

流石メンバー。
「まぁな」
「すみれに、手を出した?」

その瞬間、吐き気がして口を手で抑える。
「……やっぱり。何した?」
顔が怖え。
「……キス」
答えるとミドリに顔面ぶっ叩かれた。
「てめぇ、すみれに手出ししやがって…!!」
おお、めちゃくちゃ怒ってる。


「すみれはどうだったんだよ!!」
「ファーストキスだって」
「なおさらふざけんな!!」

声を荒げるミドリ。
鼓膜破れる…。

「あ、でも、俺とすみれ付き合うことになったから」

「っは?」

ぽかんと間抜けた顔だ。
「じゃあな、掃除しとけよ〜」
俺は、ミドリを残して教室から出ていった。
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