推しと恋しちゃだめですか?
◇◇◇◇◇◇

もう授業も終わって、俺は急いで帰る。

保険の教師から、「すみれさんが熱を出した」と聞いたからだ。

ようやく寮について、すみれの部屋の扉を叩く。
くそっ、出ねぇな。
ダメ元でドアノブをひねると、ガチャリと音がしてドアが開いた。

あいつ、鍵してねぇじゃん。
入ると、すぐに鍵をして、玄関で靴を脱いで部屋に入る。

女の部屋とかよくわからないけど…。

「すみれ!」
ベッドには、ぐったりと寝込むすみれの姿があった。

息も荒いし…。
俺は一度自分の部屋に帰って、看病道具一式を持ってくる。

母さんに言われて持ってきて正解だったな…。

氷枕と冷えたシートをおでこに貼って、布団を肩までかける。
「ゆ、うとくん…?」

あ、起きた。
「お前、熱出したんだろ」
「あ、そうだったんだ…」

自分の体調わからないとか、鈍感超えてバカなのか…?
「何があったのかわからないけど…、看病してくれたんだよね?ありがとう」
自分が辛いのに、俺に感謝している。

やっぱりバカだな…。安静にしとけっての。
という気持ちと、愛らしさで胸がいっぱいになる。

「なんか食いてぇのあるか?」
「ううん。でも、1つだけお願いがあるの…」

お願い?何だ…?
「もうちょっと、一緒にいてほしいな、なんて…」

…なんだそれ。
可愛すぎだろ……。

「いいに決まってるだろ」
そう言うと、すみれはえへへと笑顔になった。
可愛い…、熱出てるせいか、余計に甘えん坊になって、可愛さが溢れてる…。

「俺たち恋人なんでね」
「っ……!?」

途端、すみれの顔が真っ赤なりんご色になっていく。
「そ、れは…、からかわないで…!」
必死に抵抗するすみれが可愛すぎる。

看病の疲れとか吹き飛んだ。
このままずっと居てぇ、なんて思った時。


どんどんどんどん!!!
ドアを必死に叩く音が聞こえて、あいつか…、と察する。

ガチャッと、扉を開けると、「すみれ!」と声をあげるそいつ。
「大丈夫って、は?」
もちろんミドリだ。

「ゆうと、なんでお前が…?」
だろうと思った。
「恋人なんでね〜」
またぶっ飛ばされると思ったけど、すみれがよろよろと玄関まで歩いてきた。

「土戸くん、わざわざお見舞いありがとう…って、きゃ…っ」

すみれの小さな悲鳴がして、倒れかけたからだを支える。

「っ…と。大丈夫?」
「ゆうとくん、ありがとう…」

焦った…。
本当すみれは危なっかしい…って、今は風邪だから安静にさせとかないと…。

「すみれ、ベッドに戻って安静にしといて」
俺の気持ちを悟ったのか、ミドリがふわりと微笑んだ。
「でも、土戸くんせっかく来てくれたんでしょ?」

「来てくれたって…、隣の寮だけど」
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