演劇部の宇良先輩がやたらとグイグイ来るのですが?

第6話 先輩とふたりだけの即興劇(前半)



「……いい? あらすじだけ決めて、あとは即興でいくよ」
「はい」

 午後の休み時間にも何度も先輩と人目のあまりない職員室の近くで打ち合わせをする。

 放課後、部活が始まると宇良先輩が、部長の宍戸先輩に提案する。
 1年生もそろそろ基礎練習だけではなく、即興劇を覚えてもいいのではないですか? と。
 宍戸先輩も「わかった。宇良くんが言うならやってみましょうか」と賛成すると3年の他の先輩方もOKを出してくれた。

「実はちょっとみてもらいたいものがあって」
「うん?」

 宇良先輩が提案したのは私とふたりで行う即興劇。
 休み時間たまたま廊下で会ったので、後輩=咲来常に即興劇のことを教えてあげたとのフォローまでしてくれた。

「じゃあいくよ?」
「はい」

 宇良先輩の合図とともに役に入るよう集中する。


「ここはある大国の城の中、この国の第2王子の元へ、近隣にある小国の第3王女が嫁いできた」

〈先輩が物語を語り始める。静かに、でもよく通る声が室内に響く〉

「彼女の名はエミリー、母国防衛のため、政略結婚でこの国へきたが、あまりにもひどい仕打ちが彼女を待っていた」


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