演劇部の宇良先輩がやたらとグイグイ来るのですが?
第7話 先輩とふたりだけの即興劇(後半)
王は、ふたりの王子に語りかける。
我が願いを叶えたものに王の座を譲位すると。
第一王子は焦った。まさか父である国王がそのような世迷い言を口にするとは。
第一王子は父王が病で気が触れてしまったと、家臣のもの達を言い包めようとしたが、第一王子よりも第二王子フェリクセンが王の資質を備えていると知っている一部のものが、城の外に情報を漏らし、またたく間に国内はおろか近隣諸国まで王の言葉が駆け巡った。
第一王子は焦り、お触れを出した。
王の望みを叶えたものに莫大な褒美を取らせると。
〈宇良先輩は左手を胸にあて、右手を大きく横に振る〉
「しかし第二王子フェリクセンは困ってしまった」
兄が次の王になると思っていた彼には野心というものを持ち合わせていなかった。
それは王太子妃エミリーも同じだった。
彼女はただただ静かに暮らしたいだけなのに、周りが意地悪をしてくる
〈私は扉から離れ、先輩の方向へ向き直り、顔をうつむけたままで待機する〉
何百、何千人という人が城に押し寄せた。
皆、褒美に目が眩んだ人たちで、吟遊詩人《バード》や他国に使える宮廷詩人《トルバトール》、職業芸人《ミンストレル》、芸術詩人《バウル》、聖歌隊《クワイヤ》といった多様で多彩な面々が顔を揃え、声の調べに乗せて歌いあげるが、王のお眼鏡に適うものはいなかった。
「ええい、フェリクセンよ、オマエは誰も父王のもとへ人を寄越してはいないではないか」
うまくいかない第一王子は、フェリクセンに八つ当たりをして、もし、明日の晩までに誰ひとり歌い手を用意できないのであれば、オマエに王の資格などない。この国から追放してやると罵《ののし》った。