演劇部の宇良先輩がやたらとグイグイ来るのですが?
第14話 声
「その頃、常ちゃんに救われたんだ」
「私に?」
宇良先輩……当時の雨男くんからみた私は他の女の子と違って、アリの行列を眺めている自分の隣に座って一緒に観察していたそうだ。
雨男くんはクラスのいじめっ子に外見だけで、「オマエがいると雨が降るんだよ、あっち行け」と言われ、それが広まり、周囲に「雨男」と呼ばれて孤立していたそうだ。
そんな時に公園で同じくいつも独りの女の子がいて、なにもしゃべらないのに傍にいてくれて、とても心が救われたそうだ。
「でも常ちゃんもその頃からイジメられてたよね?」
そう、声が高い、という理由で、耳がおかしくなるとクラスの男子に意地悪されていた。友達もなかなかできず、よく公園で時間を潰していたのを覚えている。
「雨の日、オレ聴いたんだ。常ちゃんの歌声」
ある日、雨が降っていて公園には誰もおらず、コンクリートで出来た滑り台の雨風にさらされない下の場所で、いつものようにアリの行列を眺めていると、雨が降っているのに滑り台で上から歌声が聞こえたそうだ。
宇良先輩は雨のせいなのかは、わからなかったそうだが、目に涙を浮かべながら私が歌っていたそうだ。
なぜかはわからない。でもその歌声を聴いて、自分も涙が溢れてきた自分に驚いたそうだ。
──そして、その歌声を聴き恋をしたと。
「常ちゃんの声はオレにとってはかけがえのないもの、そしてボクはそれからずっと恋に落ちている」
「なッなにを///////」
ちゃんとした言葉が出て来ない。とにかく顔がリンゴのように真っ赤になっていることは間違いない。
そっか、以前見た夢って、あの時、私宇良先輩に気が付いて約束したんだっけ……私が歌ったのをふたりだけの秘密にできる? って……。