演劇部の宇良先輩がやたらとグイグイ来るのですが?
「だから新入部員初日に『あっ』って声を聞いてすぐに常ちゃんだって分かったんだ」
そんな短い一声で……。
「常ちゃん、オレはキミのことがずっと好きだ」
頭が真っ白になっていくなか、後ろの方に立っている都成先輩がウインクして合図をする。
今わかった……。
都成先輩のウインクの意味って。
「わわわ私も宇良先輩のことが好きです///////」
言ってしまった。
モブキャの私が分不相応のことをしでかしてしまった。
宇良先輩は、一度背を向けガッツポーズをしている。そんなに嬉しかったのでしょうか?
「あとさ、ちょっといいかな?」
「わお♪」
ななッ、なにをしてるんですか?
宇良先輩が私のマスクを外し、前髪を左右にかき分け、前髪で普段隠している素顔を露出すると、都成先輩が驚いた。
「知ってたんだ。常ちゃんが隠れ美人ってこと」
恥ずかしい。あんまり顔をジロジロを見ないで欲しい。
「おめでとう、ふたりとも、ボクからの餞別聞きたい?」
都成先輩はからかうように宇良先輩と私に質問する。
「歌声のパートもあるし、ヒロイン『キアナ』役は咲来さんに譲るよ」
「は、はひぃ」
まだ、梅雨が明けていない今日、本番当日は晴れ上がって、最高の舞台を学校のみんなに贈ることができるだろう……。