芸能人の幼なじみと、ナイショで同居しています
「はぁ、はぁ……っ」
私は廊下の途中で立ち止まり、呼吸を整える。
そして、スクールバッグの内ポケットに入っていたヘアゴムを取り出し、慌てて髪をひとつに束ねた。
別に、悪いことをしたわけじゃないけど。
ファンの子たちのあんな言葉を聞いたら、急に怖くなってしまって。
あの写真に写っているのが、自分だとバレたくないと思ってしまった。
「かーじまさん♪」
教室に着き、私が自分の席に座っていると、いつものように陣内くんが話しかけてきた。
「おっはよーう」
「お、おはよう……」
陣内くん、今日も朝からテンション高いなぁ。
「……あれ? 梶間さん、今日は何か元気なくない?」
「そ、そう?」
「それに、今日は髪ひとつに結んでるんだ? 可愛い〜。でも、なんで?」
さっそく陣内くんに尋ねられ、ドキリとする。
「えっと。きょ、今日はお天気も良くて、ちょっと暑いから……」
「ふーん?」
陣内くんは、意味深に口の端をくいっと上げた。
「ねえ、梶間さん。ちょっとこれ見てよ。面白い写真があるんだけど」
陣内くんがニコニコと、私に自分のスマホを見せてくる。