芸能人の幼なじみと、ナイショで同居しています


「梶間さんが引っ越して、久住が芸能人になってからも、まさか二人の関係は今も変わらず続いていたなんて……羨ましいな」


陣内くんの顔は笑っているけど、なんだか少し泣きそうにも見える。


「陣内、分かってると思うけど……萌果に、もう二度とこんなことするなよ?」


藍が、陣内くんに釘を刺す。


「もちろんしないよ。ふたりとも……秘密の関係頑張って? お幸せにね」


陣内くんは立ち上がると、ひらひらと私たちに手を振って、屋上から出ていった。


「陣内のヤツ、本当に分かったのか?」


陣内くんが歩いて行ったほうを、藍が軽く睨む。


「たぶん、陣内くんはもう大丈夫だと思うよ」


陣内くんが『お幸せに』と言ったとき、今まで見たなかで一番優しい顔をしていたから。


それに藍が屋上に来る直前、陣内くんは涙を流す私を見て『ごめん』と先に一度謝ってくれていた。


私が陣内くんの想いに応えられなかったからといって、彼が私たちを盗撮して脅すという行動に出たのは、簡単に許せることではないけれど。


いつか陣内くんと、クラスメイトとして普通に接することができたら良いなって思う。

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