芸能人の幼なじみと、ナイショで同居しています
「陣内のことを、信じてあげられるなんて。ほんとすごいなぁ、萌果ちゃんは」
藍が両腕を広げて抱きしめてこようとしたので、私は慌てて藍から逃げた。
「えっ、萌果ちゃん?」
藍が、目を大きく見開く。
たぶん、私が藍に触れられるのを初めて拒否したから。
「ご、ごめん……ほら、あんなことがあったあとだから。外では、周りにもっと警戒しないと」
もちろん、それもあるけれど。
逃げた一番の理由は、藍のことが好きだと自覚して、多少の照れくささもあったから。
「そうだよね。俺、軽率だったよね。ごめん」
しゅんとした様子の藍が私から少し距離をとって、コンクリートの上に腰をおろす。
「元はと言えば、こんなことになったのも俺のせいだし。数学の補習のとき、俺が萌果ちゃんにハグして欲しいって言ったから」
「ううん。あのときは、私も藍を抱きしめたくなったから……藍は悪くないよ」
「萌果ちゃんは、やっぱり優しいね」
藍が、にっこりと微笑んでくれる。