芸能人の幼なじみと、ナイショで同居しています


「しーっ」


藍が繋いでいないほうの人差し指を自分の唇に当てると、続けて私の耳元に唇を寄せた。


「上映中はお静かに」

「っ!」


藍に耳元で囁かれ、肩がピクっと揺れる。


「今日待ち合わせ場所で会ったときから、本当はずっと萌果と手を繋ぎたかったんだ。でも、我慢してた」


耳元に藍の唇があるため、藍が話すたびに吐息がかかってくすぐったい。


「上映中で、辺りが暗い今だけにするから……このまま手、繋いでても良い?」

「うん。良い、よ……」


本当は私も、藍とずっと手を繋ぎたかったから。


私は繋がれた手に、キュッと力を込める。


藍の手は、大きくて少し骨ばってて。いつ繋いでも温かい。


それから私たちはこっそりと手を繋いだまま、映画鑑賞を楽しむのだった。

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