芸能人の幼なじみと、ナイショで同居しています
「いってえっ!」
藍の私を抱きしめている力がゆるみ、私は彼の腕からようやく抜け出すことが出来た。
「ちょっ……いきなり殴るとか、いくら何でもひどいだろ」
私がうっかり殴ってしまった頬を、藍は自分の手でさすっている。
「この顔、俺の大切な商売道具なんだけど?」
あっ、そうか。藍は、ファッション誌のモデルさんだから。
「ご、ごめん、つい……」
「萌果ちゃんが、ここにキスしてくれたらすぐに治りそうなんだけどな~」
藍が、わずかに赤らむ自分の左頬を指さす。
「ほら。悪いと思ってるなら、俺にキスしてよ?」
妖艶な顔が再び近づき、吐息が唇にかかってドキッとする。
「はい!? キキキ、キスとか! いくら相手が藍でも、絶対にしないから……!」
叫ぶようにそう言うと、私は藍の部屋を逃げるように飛び出した。