芸能人の幼なじみと、ナイショで同居しています
ていうか藍、開いたブラウスの隙間から胸元がチラッと見えてるんだけど……。
逞しい胸板を直視できず、私は少し視線を逸らしながら、藍のブラウスのボタンをひとつふたつと留めた。
よし。あとは、首からぶら下がったままのネクタイを結ぶだけ。
「ごめん、藍。少し屈んでくれない?」
モデルである藍は背が高くて、私は背が低いから。
身長差があるせいで、ネクタイをうまく結べない。
「……これでいい?」
唇の端を上げながら、藍が顔をこちらに寄せてくる。
「ちょっ、私、顔を近づけてなんて言ってない!」
近づいた藍の髪からふわっとシャンプーの香りが鼻を掠めて、ドキッとする。
「でも、近いほうがやりやすいでしょ?」
藍は目を細めながら、私を追い込むように更に詰め寄ってくる。
私はジリジリと後退するうちに、洗面所の壁にトンと背がついてしまった。