芸能人の幼なじみと、ナイショで同居しています


「俺、盗撮する人は好きじゃない。昔の嫌な思い出のせいで、ただでさえ女子が苦手なのに。そんなことをされたら、もっと苦手になる。それに……」


藍にギロリと睨まれ、先輩の肩がビクッと大きく跳ねる。


「この子のこと、殴ろうとしたでしょ? それって人としてどうなの? 相手が気に入らないからって、すぐに手をあげるなんて。俺、そういう人は嫌い」

「……っ! ご、ごめ……写真消します」


応援していた藍に『嫌い』と言われたのがショックなのか、先輩の目には薄らと涙が。


「ゴミ箱にあるのも」

「はい……消しました」


スマホの画面を、藍に見せる金髪先輩。


「どうも。さっきはつい、キツい言い方をしてしまったけど……俺のこと、応援してくれてありがとう。これからは盗撮とかじゃなく、違う形で応援して欲しい」


金髪先輩にそれだけ言うと、藍はスタスタと廊下を歩いていく。


藍、私のことを助けてくれたんだ。


小学4年生くらいから藍はモテていたけど、その頃は女の子をただ冷たくあしらうだけだった。


でも、今はああいう盗撮をしていた先輩にも『応援ありがとう』って言えるなんて、すごい。藍も変わったんだな。


「ら……。久住くん、ありがとう!」


私が藍の後ろ姿にお礼を言うと、藍はこちらを振り返ることなく片手を上げた。

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