芸能人の幼なじみと、ナイショで同居しています


「えっ?」

「あの子、細身のわりによく食べるじゃない? もちろん、萌果ちゃんのお弁当を食べても良いんだけど……」


橙子さんは少食の私と食べ盛りの藍で、それぞれお弁当のご飯とおかずの量を変えてくれている。


ウチの高校は私立だから、学食ももちろんあるけど……。


藍が学食に行くとファンの子たちに囲まれて、ジロジロ見られながら食事することになるから。

それが嫌で、学食は行かないって言ってたっけ。


「萌果ちゃん、お願いしてもいい?」


藍とは学科は違っても、同じ学校だし。何より私は、ここに居候させてもらっている身なんだから。


橙子さんのお願いを、断るなんてできない。


それに、橙子さんがせっかく早起きしてお弁当を作ってくれたんだもん。


「分かりました。藍のお弁当は、私が持っていきます」

「ありがとう。それじゃあよろしくね」


私は笑顔の橙子さんから、藍のお弁当を受け取る。


今をときめく人気モデルで、ただ歩くだけで注目の的になる藍にお弁当を渡すなんて、かなり難しいだろうけど。


タイミングを見て、どうにか互いのお弁当を交換しなくちゃ。


「あっ、そうそう。萌果ちゃん、今日は学校が終わったら、なるべく早く家に帰ってきてね」

「分かりました」


橙子さん、早く帰ってきてってどうしたんだろう?


疑問に思いながら、私はトーストを口に運んだ。

< 44 / 163 >

この作品をシェア

pagetop