芸能人の幼なじみと、ナイショで同居しています
その日の夜。
藍の家のダイニングで、私は橙子さんと夕食をとっている。
藍は、撮影で沖縄に行っているから家にいない。
「夫は今、単身赴任中だから。萌果ちゃんがいてくれて良かったわ」
ニコニコとそう言ってくれる橙子さんに、私は微笑む。
橙子さんとふたりきりのご飯は、今日が初めてだから。新鮮で良いけれど……少し寂しいかも。
私は、誰も座っていない目の前の席を見つめる。
藍がいなくて寂しいだなんて。
柄にもなくこんなことを思ってしまうのは、私がここに居候させてもらうようになってから、藍がいない夜が初めてだから?
「……」
私は黙々と、ビーフシチューを口に運ぶ。
藍は、今頃ホテルかな?
藍は今、何をしているんだろう。
夕食はもう食べたかな。
さっきから、なぜか藍のことばかり考えてしまう。
今日学校の空き教室でこっそり会って、藍にたくさん抱きしめられたはずなのに。
すでにもう、藍に会いたいって思っている自分がいる。
どうしてなんだろう。
おかしいな、私……。