芸能人の幼なじみと、ナイショで同居しています


梶間萌果。


俺が長い間、ずっと想い続けている女の子の名前。


いつから萌果が好きなのかと聞かれたら、それは分からない。


俺は、物心ついたときからすでに萌果のことが好きだったから。


4月生まれの萌果と、3月生まれの俺。


同い年とはいえ、約1年違う俺たち。


だからか、萌果はいつも姉のように俺の世話を焼いてくれた。


中性的な顔立ちで、弱虫で泣いてばかりいた俺は、幼稚園の頃は女子にしょっちゅういじめられていた。


『藍のこと、いじめるなんて許さない!』


そんな俺のことを守ってくれたのも、萌果だった。


幼稚園で、俺がお菓子を女子に取られたときは、萌果が『私の分のお菓子をあげる』って半分こしてくれたし。


俺が転んで膝を怪我したときは、萌果が『痛いの痛いの飛んでけー!』って言って、絆創膏を貼ってくれた。


小学生になると、萌果が俺によく勉強を教えてくれた。


萌果は可愛くて、頭が良くて。正義感が強くて、分け隔てなく誰にでも優しい。


そんな彼女のことを、俺は歳を重ねるごとにどんどん好きになっていった。


幼稚園の頃に女子にいじめられたせいで、俺は女嫌いになってしまったけれど。


萌果のことだけは、ずっと特別だった。


だから、萌果が父親の仕事で福岡に引っ越すと聞いたときは、ガンッと殴られたような衝撃が走った。

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