芸能人の幼なじみと、ナイショで同居しています
8. ふたりきりの夜
数日後。
「ただいま帰りましたー!」
夕方。学校から帰宅すると、橙子さんがリビングで大きめのバッグに荷物を詰め込んでいた。
どうしたんだろう。何だか、急いでるみたいだけど……。
「あっ。萌果ちゃん、おかえりなさい」
「ただいまです……あの、どうかされたんですか?」
「それがね……」
バッグから顔を上げた橙子さんが、困ったように眉根を下げた。
「夫が、過労で倒れちゃったみたいで……」
「ええ!? それは、大変ですね」
橙子さんによると、関西に単身赴任中の藍のお父さんが、働きすぎによる過労で倒れてしまったらしい。
「あの人は大丈夫だって言うけど、さすがに心配だから。一度様子を見に行こうと思って」
「はい」
家族が倒れたって聞いたら、誰だって心配だよ。藍のお父さん、何ともないと良いな。
「そういう訳で、今夜は家に帰れないから。萌果ちゃん、悪いけど……藍とふたりで仲良くやってくれる?」
「はい……って、ええ!?」
うそ。私が藍と、この家でふたりきり!?