芸能人の幼なじみと、ナイショで同居しています


「ほんとにごめんね。明日の夜には、帰れると思うから……」

「ただいまー」


私と橙子さんが話していると、藍が帰ってきた。


「どうしたんだよ。荷物なんか詰めて……」

「おかえり、藍。実はね……」


橙子さんが、さっき私に言ったのと同じことを藍にも伝えた。


「倒れたって、まじで!? 父さんは大丈夫なの!?」

「お母さん、様子を見てくるから。今夜は、萌果ちゃんとふたりだけになるけど……」

「分かった。俺に任せといて。この家も萌果のことも、俺がしっかりと守るから」


藍が、ポンと胸を叩いてみせる。


「昔は泣き虫だったのに。藍も言うようになったわね〜。というわけで、萌果ちゃん。悪いけど、よろしくね」

「はっ、はい。私も、家事とか頑張りますので」


私としては、高校生の男女が家にふたりきりという点が少し引っかかったけど。


藍のお父さんの緊急事態なんだから、仕方ないよね。


それから少しして「戸締りと火の元には、気をつけてね」と念を押して、橙子さんが家を出て行った。

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