芸能人の幼なじみと、ナイショで同居しています


橙子さんが家を出て行き、リビングには藍と私のふたりだけになる。


以前、藍の部屋にふたりってことはあったけど。

家で、完全に彼とふたりきりなのは初めてだから。


そう思うと、体に緊張が走った。


「そうだ。藍、今日の夕飯どうしようか?」


リビングの時計に目をやると、もうすぐ18時。


「もしチャーハンでいいなら、私作るよ?」

「えっ、チャーハン!?」


藍の顔が、パッと明るくなる。


「萌果ちゃんが作ってくれるの!?」

「うん」

「やった。俺、チャーハン大好きなんだよね」


知ってるよ。だから、藍に聞いたの。


「それじゃあ、今から作るから。待ってて?」

「はーい。楽しみだなぁ」


藍がニコニコと、リビングのソファに腰をおろす。


久住家で同居するようになってからは、お料理はいつも橙子さんに甘えてしまっていたから。


思えば、藍に手料理を振る舞うのは今日が初めてかも。


どうせ作るなら、藍に『美味しい』って言ってもらいたいし……頑張ろう。

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