芸能人の幼なじみと、ナイショで同居しています


藍、まさかあんなに喜んでくれるなんて。


ご飯、頑張って作って良かったな。


私が夕食後の洗い物をしようと、キッチンのシンクの前でスポンジを手にしたとき、藍がやって来た。


「萌果ちゃん。夕飯を作ってくれたお礼に、あと片づけは俺がやるよ」


スポンジを持った手を藍に掴まれ、肩がぴくっと跳ねる。


「えっ、いいよ。居候させてもらってるんだし、洗い物は私がやるから」


今言ったことは、もちろん本音だけど。


昔、藍がお手伝いで食器洗いをしたとき、お皿を割って怪我をしたことがあったから。


小学生の頃みたいに怪我をしたりしないか、ちょっと心配というか……。


「もしかして、俺がお皿を割らないかって心配してる?」

「いや……」


見透かされてしまった。


「もう子どもじゃないんだから、大丈夫だって。俺に任せといてよ」


腕まくりした藍が、笑いかけてくれる。


「萌果ちゃんは、先にお風呂入ってきて」

「ありがとう。それじゃあ、お願いしようかな」

「うん。ごゆっくり〜!」


藍にニコニコと手を振られ、私は洗面所へと向かった。

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