芸能人の幼なじみと、ナイショで同居しています


「きゃあっ」


お風呂に行っていたはずの藍が、いつの間にかそばに立っていてびっくり。


「萌果ちゃん、驚きすぎ」


だって、今テレビに映っていた人が自分のそばに立ってたら、ふつう誰だって驚かない?


スウェット姿の藍が、ソファの私の隣に腰掛ける。


お風呂上がりの石けんの香りがふわっと漂って、私は思わず距離をとった。


「逃げないでよ」


藍は、私との距離を詰めてくる。


「……で? 俺がそばに来ても気づかないくらい、誰に夢中になってたの?」


わざとらしく顔の距離を縮められ、頬に熱が集まる。


「な、内緒!」


そんなの、恥ずかしくて言えるわけないじゃない。


「そんなこと言わないで、教えてよ」


耳元で囁かれ、肩がぴくんと跳ねた。


「ねぇ、誰?」


藍の唇が私の耳たぶに、ちゅっと軽く触れる。


……う。これは、きっと答えないとまずいやつ。

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