お飾り妻は嫌われたい!~愛のない契約結婚のはずが、旦那様がなぜか離してくれません~
 一夜明けた、女学校生活の二日目。

 今日は、社交界デビュー前の令嬢が王宮内を見学できる特別な日。
 グレイス女学校の他にも、王都にあるさまざまな学校の生徒が集まり、着飾った少女たちが豪華絢爛(ごうかけんらん)な城内を行き交っている。

 見学可能な場所はどこも人で溢れ返っていて、王宮舞踏会が開かれる大広間の出入り口には長蛇(ちょうだ)の列ができていた。

 感嘆のため息をこぼす令嬢たちはみな、この煌びやかな舞踏ホールで社交界デビューをする日を夢見ているに違いない。

 最初は私もみんなと同じく見るものすべてに感動していたけれど、だんだん気分が悪くなってきて、見学どころではなくなってしまった。

(うぅ……人に酔っちゃったのかな。めまいがして、すごく気持ちが悪い……)

 立っているのも辛くて座る場所を探していると、グレイス女学校の引率の先生が手を高く掲げて呼び声を上げた。

「みなさん、見学はここまでですよ。グレイス女学校の生徒は集まってください! この後は、離宮のお部屋でお茶会をいたします。さぁ、移動しますよ!」

 あぁ、よかった……このまま立っていたら倒れてしまうところだった。

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