お飾り妻は嫌われたい!~愛のない契約結婚のはずが、旦那様がなぜか離してくれません~
「待って! やる、やります。お悩み、解決いたします」
「よろしい。期待しているぞ」

 少年は腰に両手を当てて、大人の真似をするように鷹揚(おうよう)に告げてくる。

 この子、私よりお子様なのに……。さっきから、すごく偉そう。
 でもここは、年上の私が広い心で許してあげなきゃいけないわよね。

「それで? 貴方のお悩みって、どのようなことでしょうか?」

 そう尋ねると、少年は先程までの自信に満ち溢れた様子から一転、ためらいがちに口を開く。

「……家族の望む生き方と、自分の気持ちが違ったら、お前ならどうする?」
「えっ? ええっ? そ、それはですね……」

 てっきりお小遣いが少ないとか、気になる女の子に告白する勇気が出ないとか、その程度の悩みだと思っていたのに……。
 少年が投げかけてきた難しい問いかけに、私はどう答えたらよいのか口ごもってしまった。

 家族が望む生き方と、自分の気持ちが違ったら……。

 私自身、父の望む生き方と自分の気持ちが違うことがある。グレイス女学校への入学を決めた時が、まさにそう。
 だから、少年の苦悩が少しだけ、分かるような気がする。

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