【10/5書籍発売お試し読み】お飾り妻は嫌われたい!~愛のない契約結婚のはずが、旦那様がなぜか離してくれません~
「お前、見た目は変だが、中身は案外まともなのだな」
「え? それって、褒めているの?」
「あぁ、そう聞こえないか?」
「う~ん、褒められたような気はしないけど、貴方が笑ってくれたからホッとした!」
少年の様子を見る限り人を呼ぶ気配はなさそうで、通報の危機は一旦去ったみたい。
とりあえず、よかった……。
「それで、貴方のお悩みは解決したの?」
「あぁ、一応。仕方ないな、今回は見逃してやるとしよう」
悩みが消えたのか溌剌と笑う少年につられて私も微笑んでいると、遠くからゴーンゴーンと王宮見学の終了を知らせる鐘の音が鳴り響いた。
大変! このままだと置いていかれちゃう!
「私、もう行かなくちゃいけないの!」
「おい、ちょっと待て! お前、名前は?」
「私は──」
名乗ろうとして、私はとっさに口を噤んだ。
こんな身なりで王宮の庭園にいるなんて、どう考えても褒められたことではない。
ただでさえ野蛮令嬢と呼ばれているのに、そこに今日の醜聞まで加わったら、いったいどんな噂を立てられてしまうのか……。
ここは本名を告げず、お芝居で見た決め台詞を言いましょう。
「え? それって、褒めているの?」
「あぁ、そう聞こえないか?」
「う~ん、褒められたような気はしないけど、貴方が笑ってくれたからホッとした!」
少年の様子を見る限り人を呼ぶ気配はなさそうで、通報の危機は一旦去ったみたい。
とりあえず、よかった……。
「それで、貴方のお悩みは解決したの?」
「あぁ、一応。仕方ないな、今回は見逃してやるとしよう」
悩みが消えたのか溌剌と笑う少年につられて私も微笑んでいると、遠くからゴーンゴーンと王宮見学の終了を知らせる鐘の音が鳴り響いた。
大変! このままだと置いていかれちゃう!
「私、もう行かなくちゃいけないの!」
「おい、ちょっと待て! お前、名前は?」
「私は──」
名乗ろうとして、私はとっさに口を噤んだ。
こんな身なりで王宮の庭園にいるなんて、どう考えても褒められたことではない。
ただでさえ野蛮令嬢と呼ばれているのに、そこに今日の醜聞まで加わったら、いったいどんな噂を立てられてしまうのか……。
ここは本名を告げず、お芝居で見た決め台詞を言いましょう。