今日も世界は愛で満ちてるというのに私の世界に愛は無い~愛を知らない私は愛を乞う
私は雨と出会いに愛を乞う

 その日は雨が降っていた。

 人の声さえも遮るような強い雨がアスファルトを打ち付け、大きな雨粒が強い音を立てている。

「寒いな……」

 独りごち、膝を抱えながら雨がやむのを待つ。

 梅雨が過ぎ暑い日が続いていたせいで、今日は半袖にショートパンツ姿だった。

 失敗したな……夜になってから、こんな風に雨に降られるとは思わなかった。

 ネオンの煌めく繁華街の隅で両膝を抱えながら、ボーッと水たまりの上に出来る波紋を眺めていると、耳を(つんざ)くような雷鳴が轟いた。

 ビクリと体を跳ねさせながら耳を塞ぐと、後ろで扉が開く音がした。

「やだ、あんたこんな所で何してんの?」

 ずぶ濡れで膝を抱える私を見たその人は、驚いた様子で声を掛けてきた。

「仕方ないわね。ほら、こっちに来なさい」

 店の中に通されながら、私は周りを見渡した。暗い店内にはカウンター席に椅子が並んでいるのに、テーブル席には椅子が置かれていない……。

 立ってお酒を飲むのかな?あっ、奥にソファー席があるんだ。
 
 そんな店内のカウンターの奥には沢山のお酒が並び、大人な空間が広がっていた。

「こういう所に来るのは始めてでしょ?あんた、未成年?」

 そう聞かれコクリと頷くと、タオルを手渡された。

「これで体を拭きなさい。はぁーお店が始まる前で良かったわ」

 タオルをジッと見つめていると、目の前の人はしびれを切らしたのか、私の手からタオルを奪うと私の頭をガシガシと拭きだした。

「どうしたの?タオルの使い方も分からない?」





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