今日も世界は愛で満ちてるというのに私の世界に愛は無い~愛を知らない私は愛を乞う
「愛花さんは距離を置きたかったんですよね?その……まだ僕と距離を置きたいですか?僕の愛が重たいから……愛花さんを傷つけているんですか?僕が愛を押しつけているから迷惑ですか?演技をするのは辛いですか?」
まくし立てるように言いながら、今にも泣き出しそうな歩夢の顔を見て、愛花はフッと微笑んだ。
「私は傷ついていないし、迷惑でも無い。距離は置かないよ。歩ちゃんの側にいる。それに私は歩ちゃんの前で演技をしている事って少ないんだよね。かなり素が出ているの。でもこの先も私は歩ちゃんを愛することは出来ない。でも好ましくは思っているの。それに気づいたから……。それで良いなら歩ちゃんの側にいさせて欲しい」
そう言いながら歩ちゃんの頬に触れると、黒いビー玉みたいな瞳からポロポロと涙がこぼれ落ちた。それを見て私はそっと涙を吸い取るように唇を押し当てていく。何度も何度も頬に触れ、瞼の上にもキスを落としていく。されるがままになっている歩夢に、ついばむように何度もキスをすると、ようやく歩夢の涙も止まった。
「愛花さん、僕は愛花さんさえ側にいてくれたら何もいらないんです。愛花さんは僕に愛が返せないから辛い思いをさせると思っているようですが、それは必要ありません。僕は愛が欲しいわけじゃ無い。与えたい人間なんです」
愛を与えたたい人間……。
「歩ちゃんは私で良いの?」
「はい。愛花さんが良いんです」
私は歩ちゃんの首に腕を回して抱きついた。
「歩ちゃん、ありがとう」
ギュッと抱きしめた愛花を歩夢が嬉しそうに抱きしめ返した。二人の鼓動が重なり、幸せな時間が流れていた。