今日も世界は愛で満ちてるというのに私の世界に愛は無い~愛を知らない私は愛を乞う
父に見送られ、僕はエレベーターに乗り込む。一階のボタンを押すと、続々と各階から社員が乗り込んできて挨拶をされた。ロビーに出ると腕に誰かが絡みついてきた。会社でこんなことが出来るのは一人だけだ。
「歩夢、今日は早いんだねぇ。一緒にご飯でも行こうよぉー」
「吉川さん、申し訳ないけど先約があるんです」
「えぇー。それってあの子のこと?えっと愛花さんだっけぇ?」
「そうです。だから離して下さい」
迷惑だというように、腕に絡みついた吉川さんを突き放そうとするが、なかなか離してくれない。何処からこんな力が出てくるんだと思いながら時計を見ると、愛花さんとの待ち合わせ時刻が近づいていた。
「いい加減にして下さい」
そういった時、前から黒い服を着た人が……。
「あれー?吉川さんじゃっん。また会ったね」
そう言って笑っている愛花さんの目は笑っていない。
「悪いけど、その手をどけてくれる?」