今日も世界は愛で満ちてるというのに私の世界に愛は無い~愛を知らない私は愛を乞う

 ここ数日、そんな事ばかり考えていて、塞ぎ込むことが多くなった私を歩ちゃんが心配してくれていた。

「愛花さん……元気がありませんね。何か心配事でもありますか?」

「…………」

 私はそう聞かれても何も答えられ無かった。

 これは私の問題だ。

 この子と私の……。

 何も言わずに黙り込む私の頬に歩夢が触れた。

「愛花さん?今思っている事を口にしてもらえますか?」

「…………」

 私は、自分の思いを口にすることが怖くて口を紡ぎ続けた。

 子供を愛せない。

 それを口にすることで、歩夢が自分から離れていくことが怖かった。それに子供が産まれたら、歩夢の気持ちが私より子供に行ってしまうのではと怖くなる。

 嫉妬に近いこの感情は、独占欲?

 違う……これは所有欲という執着だ。

 心の中がぐちゃぐちゃになり、かき乱される。

 思いもよらなかった感情に、気持ちが追いつかない。気づけば私はボロボロと涙を流していた。それを見た歩夢がオロオロとしながらちり紙で私の涙を拭いてくれた。

 どうしてこんなに涙が出るのだろう。

 そう言えば、産婦人科の先生が言っていた。妊娠中はホルモンバランスが崩れて情緒不安定になると……そのせいで涙もろくなる人がいるんだとか。

 これがそうなのだろうか?

 私は歩夢に涙を拭われながら、歩夢の瞳を見つめた。綺麗なビー玉みたいな黒い瞳に私が映る。この瞳に、私では無い誰かが映る日が来るのだろうか?そう思うとまた涙が出た。なかなか泣き止まない私を歩夢は優しく包み込み、よしよしと頭を撫でてきた。

「いつもとは逆ですね」

 そう言って笑いながら、歩夢が私をこれでもかと甘やかす。



< 121 / 132 >

この作品をシェア

pagetop