今日も世界は愛で満ちてるというのに私の世界に愛は無い~愛を知らない私は愛を乞う
「愛花……ごめん。俺、他に好きな人が出来たんだ」
好きな人……。
私はそのキーワードに眉を寄せた。
「ホントにごめん」
頭を下げる虎ちゃんの頭頂部を見ながら、私は唇を噛みしめた。
「虎ちゃん、私の何がいけなかった?私はこんなに努力しているのに」
そうだよ。
こんなに努力しているのに。
沢山恋愛について学び、努力したのにどうしてそんな事を言うの?
付き合ってから私達は大きな喧嘩だってしたことが無い。
私達うまくやっていたじゃない。
ズキズキと胸の奥に苦い痛みを感じた。
どろりとした何とも言えない感情が湧き上がり、体が支配される。涙が出そうになるのをグッと堪えると、鼻の奥がツンと痛くなる。悲しくて更に唇を噛みしめていると、虎ちゃんが寂しそうに眉を寄せた。
「愛花……愛することに……、好きになることに努力は必要無いんだよ」
鈍器で頭を殴られた気分だった。
愛することに努力は必要無い……。
私が今までしてきたことは……無駄……だったの?
唖然とする私の両目から涙が溢れ出した。虎ちゃんはそれを見ないようにしながら瞳を伏せ、もう一度「ごめん」と呟くように声に出してその場を去って行った。
私の始めての彼氏は私の前から去って行った。