今日も世界は愛で満ちてるというのに私の世界に愛は無い~愛を知らない私は愛を乞う
別れと悲しみに愛を乞う



「ちょっと愛花、ボーッとしてるわね。飲み過ぎた?」

 徹子ママにそう聞かれ、私は曖昧に笑った。

 私は22歳になっていた。

 大学四年生になっても私はゲイバー『ラビリンス』に通っている。

 そんな私に「君、美人だね。一人で飲んでるの?」と男性に声を掛けられた。私はすました顔をしながら持っていたグラスを置き、声のする方に顔を向ける。

「ホントに綺麗だね。女の子みたいだ」

 ここにいるとこんな風に声を掛けられる事が多い。当たり前か、ここはゲイバーだ。男が男を求めて集まる場所だ。女がいるとは思わないのだろう。私もこの場所で浮かないよう、男性が着るような黒の服を着てキャップを深めにかぶっているし、仕方が無いことだった。私は男性から徹子ママに視線を移すと、困った顔をしながら徹子ママが男性に声を掛けた。

「ごめんなさいね。この子は女の子なのよ。ちょっと事情があってね……」

 言葉を濁す徹子ママを見てから男性は私をチラリと一瞥すると、後方の席にいる男性達の方へ行ってしまった。

 徹子ママは「はぁぁーー」と大きな溜め息を付いた。




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