今日も世界は愛で満ちてるというのに私の世界に愛は無い~愛を知らない私は愛を乞う
そんな私の前に三隅虎吉が現れた。美沙の彼氏の友達だという彼は、とても優しく誠実な人だった。この人なら恋が出来るかもしれない。そう思いマンガやドラマを見て恋や愛について勉強した。ドラマで出た台詞を言えば虎ちゃんは喜んでくれた。虎ちゃんが喜んでくれることが嬉しくて、私は甘えた振りもしてみた。しかしそれが演技だと、虎ちゃんは気づき始めていた。
これはまずいとリアルに恋をしている人間を観察した。『ラビリンス』でイチャつくお兄さん達を羨ましく思いながら見つめた。
幸せそうだった。
生きづらい世界で生きる彼らは、自分達は世界からはみ出しているとそう言いながらも、パートナーを見つけ、嬉しそうに笑っていた。
恋をすれば世界が光輝く。世界が色づく。世界が変わって見える。皆が口を揃えたように言うその世界を私は知らない。
だから私は演技する。
虎ちゃん……私はあなたが好きだと……。