今日も世界は愛で満ちてるというのに私の世界に愛は無い~愛を知らない私は愛を乞う
そんな私の演技に虎ちゃんは悲しそうな顔をした。そんな顔をしないで、私はこんなに努力しているのに……。
もがき苦しむ中で、テレビに映し出された文字に衝撃を受ける。
『アセクシャル』他者に対して恋愛感情を抱かないセクシャリティ。日本では無性愛者と呼ばれる。
アセクシャル……その言葉が自分にピッタリと合うように思えた。それからアセクシャルについて調べると、全てが自分に当てはまった。
誰かを好きになれない。
愛せない人間。
そうか……自分はアセクシャル。
思い悩んでいたしがらみから抜け出せるような思いだったが、それは違うと気づいた。根本的には変わらないのだ。自分がアセクシャルだと気づいただけで、誰かを愛せるわけじゃ無い。
どうしたら良いのだろうと思い悩んでいる中で、虎ちゃんの様子が明らかに変わった。目を合わせてくれない。
どうして……。
お願いだから私から目を逸らさないで。
そう思いながら過ごす中で、その日はやって来た。
好きな人が出来た……虎ちゃんの苦しそうな顔。今、一番苦しいのは私なのに……。涙を流す私を置き去りにして、虎ちゃんは去って行った。
私は振られてしまったのだ。