今日も世界は愛で満ちてるというのに私の世界に愛は無い~愛を知らない私は愛を乞う

 虎ちゃんの笑顔を思い出すと涙が溢れる。

 好きになってあげられなかった。

 ごめんなさい。

 私はあなたを愛せない。

 私には心が通じ合い愛が生まれると言う奇跡は訪れない。

 あんなに優しく、誠実な人だったのに、嫌な思いをさせてしまった。きっとあの人なりに思い悩んだだろう。私からの愛を求め、返されない思いに苦しんだはずだ。

 テレビの光だけの暗い部屋で一人、私は泣きながら謝り続けることしか出来なかった。

「ごめん……っ……ごめんなさい……ごめんなさい……つっ……ごめんなさい……虎ちゃん……」

 私はベッドの上で膝を抱えながら謝罪の言葉を言い続けた。直接虎ちゃんに謝りたかったが、それは出来なかった。今更会って謝っても何も変わらないことは分かっている。徹子ママはアセクシャルだということを話すように言ったが、私は虎ちゃんにそれを話すつもりは無い。虎ちゃんにはもう私では無い好きな人がいる。これからはその人と愛を育んでいくのだろう。私とでは出来なかった恋愛をする虎ちゃんの足かせにはなりたくない。私の事なんて忘れて幸せになって欲しい。

 もう美沙達と四人では集まることは出来ないだろう。それが悲しくて涙が出た。本来なら別れたことを悲しく思うのに、そうは思わない。やはり私は虎ちゃんのことが好きでは無かったのだ。この悲しみが恋や愛による物なら良いのにと思うと更に涙が溢れる。

 私はただ美沙達と4人で一緒にいるために、虎ちゃんと離れたくなかった。

 これは執着、固執、頓着そう言った感情だ。だから離れると悲しい。どうして涙がこんなに出るのに、この想いが愛情に変わらないのだろう。




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