今日も世界は愛で満ちてるというのに私の世界に愛は無い~愛を知らない私は愛を乞う
私の言葉にピクリと反応した歩夢が、ゆっくりと顔を上げた。この時、始めて私達の視線が交わった。歩夢の瞳は一般的な日本人の黒い瞳だというのに丸いビー玉のように煌めいていて、特別なように見えた。私はそっと歩夢の前髪をかき分けてその瞳を見つめた。私の行動に最初に驚いたのは徹子ママだった。
「愛花あんた何やってんの?」
ん?
ホントだ。何をやっているんだろう?
それにしても、前髪の下に隠れた素顔は意外とイケメンだな。
「綺麗な瞳だと思ったから」
私の言葉に、歩夢がぶわっと体を震わせたのが分かった。それと同時に顔が真っ赤に染まっていく。
それを見て徹子ママがあららと、声を出しながら溜め息を付いた。
「あんたは相変わらずの人たらしなんだから」
そう呟く徹子ママの声を聞きながら、歩夢の瞳を覗き込む。すると歩夢は視線を彷徨わせながら顔を伏せてしまった。
「何で顔を伏せちゃうの?」
愛花は歩夢の顎をクイッと掴むと顔を上げさせた。まるでキスをするかのようなその仕草に、回りをザワつかせた。しかし当の本人である愛花は真剣そのものだ。ただ歩夢の瞳が見たいだけ……ただそれだけ。