今日も世界は愛で満ちてるというのに私の世界に愛は無い~愛を知らない私は愛を乞う

「申し訳ありません。この責任は取りますので」

 責任?

 何の責任なんだろうか?

 私はそう思いながら自分の格好を見た。『ラビリンス』にいるときは髪をまとめて帽子をかぶっているが、今は黒く長いストレートの髪をたらしている。それに今私は下着と大きめのシャツ一枚のみで、素足を晒している。このシャツは勝手にクローゼットから拝借した歩夢の物だ。彼シャツと言うやつに見えるのだろう。私は歩夢の慌てている様子が面白くなってからかった。

「歩夢くん何にも覚えていないんだ……」

 正座のままの歩夢は、私の言葉を聞いて体をビクリと跳ねさせた。

「そっかー。歩夢くんは私を押し倒して……」

 そこまで言った所で、歩夢が私の言葉を遮った。

「本当に申し訳ありません。あなたは誰ですか?」

「仕方が無いな。歩夢くんは昨日のこと何処まで覚えてるの?」

「僕はその……宝田さんと飲んでいて……。その後、隣にいた人と話をして……それから……」

「そこから覚えていないんだ」 

 私がそう言うと、歩夢の首筋から汗が流れ落ちるのが見えた。かなり焦っているのだろう。

 ふふふっ……面白い。




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