今日も世界は愛で満ちてるというのに私の世界に愛は無い~愛を知らない私は愛を乞う
私はゆっくりと、記憶をたどるように話した。
「昨日私と歩夢くんは飲んでいたんだよ。そうしたら宝田さんが先に帰るって言って『ラビリンス』で見つけた可愛い子ちゃんと出て行っちゃったんだ。そのまま歩夢くんも帰るのかと思ったら、飲み続けて潰れちゃってさ。仕方ないから私が送ってあげたの。そしたら歩夢くんが覆いかぶさってきて……」
ねえ、覚えている?
そう思いながら歩夢の顎をクイッと上げた。
顔と顔が近づき、まるでキスをするような態勢……。
そこで歩夢がハッとしたような顔をした。
「隣で飲んでたお兄さん……?」
「ん?なに?思い出したの?」
私がフッとすました顔で笑うと、歩夢の顔が見る見るうちに赤く染まっていった。
この顔、昨日も何度も見せていたっけ。
「歩夢くんはさ……私の体に覆いかぶさりながら、お兄さんは男なのに良い匂いがするって言ってスンスンしてたよね」
そう言うと、赤かった顔が更に赤くなっていく。
「それから何したか覚えてる?」
「な、な、な、何をしたんですか?」
「分かっているくせに」
フーッと歩夢の耳に息を吹きかけると、歩夢くんは右耳を押さえながら後ろへ飛び退いた。
どうしよう……楽しい!
真っ赤になっている歩夢を愛花は更に追い込んで行く。
「歩夢くんは何をしたと思う?」
「ぼ、ぼ、ぼ、僕はとんでもないことを……」
「とんでもないことって?」
「それは……」
しどろもどろの歩夢の耳に愛花は唇を寄せた。
「歩夢くんのエッチ」
「うっわぁぁぁーー」
この純情そうな男性が本当にストーカーまがいな事をしでかしたのだろうか?
愛花は何だか信じられない気持ちだった。