今日も世界は愛で満ちてるというのに私の世界に愛は無い~愛を知らない私は愛を乞う

 *

 金曜日―――。

 いつもなら『ラビリンス』で歩夢を待つのだが、今日は違った。

「うっわー。でっかい会社だな」

 愛花は大きなビルを見上げながら、独りごちた。

 今の時刻は18時を過ぎていて、この会社の退社時刻になったのか、続々とエントランスからスーツを着た人達が外に出てきていた。

 さてと、そろそろ歩ちゃん出てくるかな?

 私はスーツ姿の人々を目で追いながら歩夢を待つ。

 歩ちゃんビックリするかな?

 ここに来ることは言ってないから、驚くだろうな。

 鼻歌を歌いながらその時を待っていると、前から一人の男性がやって来た。

「お前先週の野郎だよな?」

 目の前に突然現れた男に驚きつつも鼻で笑ってやる。

「ふんっ、あんたか。そう言えば歩ちゃんと同じ会社なんだったな」

 私の態度が気に入らないのか、イラッとした様子で口調を荒げた。

「お前のせいで俺は吉川と喧嘩になってんだぞ。別れるかもしれないってのに!」

「そうか。それはご愁傷様」




< 48 / 132 >

この作品をシェア

pagetop