今日も世界は愛で満ちてるというのに私の世界に愛は無い~愛を知らない私は愛を乞う

 *

 歩夢の会社での騒動の帰道、突然歩夢が頭を下げてきた。

 出会ってから歩ちゃんは謝ってばかりだな。こうやって謝る姿を何度も見てきた。

「愛花さん、すみませんでした」

 何故歩夢が謝るのかが分からない愛花は、キョトンとしながら歩夢に聞いた。

「歩ちゃんがどうして謝るの?」 

「また愛花さんを巻き込んでしまったので……」

 ああ……そう言うことか。

 今回はわざと私が巻き込まれに行ったのだ。

 だから歩ちゃんが謝る必要は無い。

 歩ちゃんをどん底に追い込んだ奴らを、同じようにどん底に追い込むために私はあの場に行ったんだ。まさかあんなに上手くいくとは思っていなかったけどね。

 私は眉を寄せる歩夢の頬に触れると、フッと微笑んだ。

「私は歩ちゃんが悲しむことをしちゃったかな?大人げなかったよね。ごめん」

「そっ……そんなことは無いです。僕はとても嬉しかったです。愛花さんが僕のために怒ってくれて……でも……」

 そこまで言って歩夢が俯いた。それから歩夢の頬に触れていた私の手をギュッと握りしめた。

「もうあんなことしないで下さい」

 あんなこと?




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