今日も世界は愛で満ちてるというのに私の世界に愛は無い~愛を知らない私は愛を乞う
私は歩ちゃんが何を言っているのか分からず、真剣に話す歩ちゃんの瞳を覗き込んだ。こんなに真剣に話す歩ちゃんに失礼だと思うけど、相変わらず綺麗な瞳だと思った。
「愛花さん聞いていますか?!」
歩夢にそう言われ、愛花はハッとする。
「あの時……塚田が殴りかかった時、自分から殴られに行きましたよね?」
その通りだった。
私は塚田を怒らせ、わざと殴られようとした。
私を男だと思い込んでいる塚田を、あそこで断罪してやろうとした。勘違いでも女を殴ったとあれば、何らかの罰があると思った。だからわざわざ歩夢の会社まで行ったのだ。しかしそれは歩夢の手によって阻止されてしまった……が、私が思い描いていた断罪とは違ったが、あいつらを追い込むことには成功した。
良い作戦だと思ったが……。
「ダメだった?」
「ダメです。どうして自分を傷つけることを平気でするんですか。今後はこのようなことは絶対にしないで下さい」
歩ちゃんが怒っている。
塚田達にあんなにバカにされても怒らなかった歩ちゃんが怒っている。
歩夢が私の両手を握り絞め、懇願するように両手の指先に唇を寄せた。
「お願いですから無茶はしないで下さい。好きなんです。あなたが大好きなんです。あなたが傷つくところは見たくない」
どうしようも無く私のことが好きなんだと、全身で表現する歩夢の姿に私は固まることしか出来なかった。