今日も世界は愛で満ちてるというのに私の世界に愛は無い~愛を知らない私は愛を乞う
男は彼女に愛を乞う

 *

 歩ちゃんは私のどこがそんなに好きなのだろう。

 人を愛せないこんな私のどこが良いのだろう。

 私はこの世界からつまはじきにされないよう常に演技をする。それは私がこの世界で生きていくための術だった。だから私はこの世界に溶け込むための演技をし続けた。

 演技をするのは大変だ。

 人を愛することが出来ないのに愛する演技をするのは苦痛だった。

 (つくろ)った笑みを浮かべ、あなたが好きだと思いを込める。

 愛しているとはどんな事なのか、好きとは何なのか、そう思いながらドラマやマンガの知識を披露した。そんなモノはやはりまねごとに過ぎず、すぐに見破られた。

 私は好きになれなくても努力するから、この世界から追い出さないで。

 世界の一部になりたくて、順応しようとあらがい愛を乞い、違う選択をしては涙する。

 愛を間違った形で披露して、修正しようと試みて、それは違うと気づく。

 『愛すること、好きになることに努力は必要無いんだよ』あの日、虎ちゃんに言われた言葉が重くのしかかった。



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