今日も世界は愛で満ちてるというのに私の世界に愛は無い~愛を知らない私は愛を乞う
男は彼女に愛を乞う
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歩ちゃんは私のどこがそんなに好きなのだろう。
人を愛せないこんな私のどこが良いのだろう。
私はこの世界からつまはじきにされないよう常に演技をする。それは私がこの世界で生きていくための術だった。だから私はこの世界に溶け込むための演技をし続けた。
演技をするのは大変だ。
人を愛することが出来ないのに愛する演技をするのは苦痛だった。
繕った笑みを浮かべ、あなたが好きだと思いを込める。
愛しているとはどんな事なのか、好きとは何なのか、そう思いながらドラマやマンガの知識を披露した。そんなモノはやはりまねごとに過ぎず、すぐに見破られた。
私は好きになれなくても努力するから、この世界から追い出さないで。
世界の一部になりたくて、順応しようとあらがい愛を乞い、違う選択をしては涙する。
愛を間違った形で披露して、修正しようと試みて、それは違うと気づく。
『愛すること、好きになることに努力は必要無いんだよ』あの日、虎ちゃんに言われた言葉が重くのしかかった。