今日も世界は愛で満ちてるというのに私の世界に愛は無い~愛を知らない私は愛を乞う
僕の思いを受け止めてくれる人はいないのだろうか……。
僕の猟奇的で狂喜的な愛は人を恐怖させる。
こんなに愛しているのに。
愛せないなら、想うことも許してくれないなら、僕はこの世界にいても意味が無いと思った。
だから手首を切った。
手首から血がつたい落ちる。
それを見ながら血は温かいのだなと思った。
ボーッとそれを眺めていると、意識が遠のいていく。そこに宝田さんがやって来た。
「歩夢、大丈夫か?しっかりしろ!」
宝田さんは僕の手首を見てすぐに止血をしてくれた。傷口はあまり深くなく、ガーゼと包帯を巻けばすむ程度だった。宝田さんに包帯を巻かれながら俯いていると「行こうか」と、手を引かれた。連れてこられたのはゲイバー『ラビリンス』……てことは宝田さんはそっちの人なのだろう。
「気持ち悪い?」
宝田さんにそう聞かれたが、僕は首を左右に振った。
僕に偏見は無い。
自分がこんなだから、他人をどうこう言うつもりはない。
愛した人が同性だって良いじゃないか。
愛せるならそれで良いじゃ無いか。
店に入ると男ばかりだった。
当たり前か、ここはゲイバーなのだから。