今日も世界は愛で満ちてるというのに私の世界に愛は無い~愛を知らない私は愛を乞う

 カウンターに座ると宝田さんは慣れた様子でお店のママと話し出した。薄暗い店内は、始めて来る場所だが居心地が良かった。クラフトビールを手渡され、一気にそれを仰いだ。するとシュワッと喉をならす音が聞こえた気がした。

 美味しい。

 何故僕は恋愛となるとこうもおかしくなってしまうのだろう。

 自分をコントロールすることが出来なくなってしまうのはどうすれば良いのだろうか。この悪癖が直らなければまともな恋愛は出来ないだろう。

 それは嫌だと思うのに、直すことが出来ない。

 そんな僕はどうすれば良いのだろう。俯いていた僕に、隣で飲んでいた男性が話しかけてきた。

「歩夢くん……愛って何だろうね?」

 そう言って僕の前髪を掻き上げてきた。僕は始めてこの人の顔を見て綺麗な人だと思った。その人が僕の瞳が綺麗だと褒めてくれた。あなたの方が綺麗ですと言いたかったが言葉に出来なかった。その代わりに体が熱くなり震えた。初めての感覚だった。その人は僕に問うてくる。

「歩夢くんの愛ってどんななの?」

 僕はありきたりの言葉を返した。

「愛……僕の愛は……相手を想い、尊重して……違う……ウソです。そうじゃない……ごめんなさい」

 僕はそこまで言って謝罪した。

 これは全てウソだ。

 だって僕の愛は相手の事なんて考えていない。

 自分よがりの物だから。




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