今日も世界は愛で満ちてるというのに私の世界に愛は無い~愛を知らない私は愛を乞う

「僕の愛は一方的だ。自分よがりで独善的で、相手の気持ちなんて考えていない。相手を無視して……僕の腕の中に囲い込んで、愛して愛して出来ることなら部屋からも出したくない。もし外を歩くなら俺がこっそり守るためについて行きたい。家にいても何があるか分からないから外で見守って、部屋の電気が消えないと帰れない」

 皆が絶句する中で、隣から「ストーカー……」と呟く声が聞こえてきた。

 そうだよ。

 僕はストーカーだ。

 お酒の勢いもあり、僕は胸を張った。

「そうなんです。僕はストーカーなんです。彼女にもそう言われました。あなたの愛は気持ち悪いとも言われました」

 そんな僕を呆れたような顔で見てから、隣にいた人は質問してきた。それに僕は答えた。そしてストーカーで警察沙汰になりかけたことも話し、手首を切ったことを話すと虚しくなった。

「バカなことをしました」

 そう言うと隣の人が「そうだね。バカだね」と言ってきた。

 ホントに僕はバカだな。

 こんなことをしたって、愛を受け取ってなんてもらえないのに。また顔を俯かせようとしたとき、隣にいた綺麗な人に手を取られ傷口の包帯に唇を落とされた。

「痛かったね。もうこんなことしちゃダメだよ」

 隣にいた男性の美しい顔が、フッと更に美しい笑顔に変わった。




< 62 / 132 >

この作品をシェア

pagetop