婚約者候補は辞退させてくださいませっ!
夕食の席で、お茶会での内容を両親に報告した。

普通になるように言われたこと、行動を慎むように言われた事を。

両親はなぜかとても喜んでいた。

「さすが、アーサー殿下はお目が高い。マリーベルに普通になるようにとは。なぁ?
マリーベルが優秀すぎるのを認めてのお言葉だ。私も鼻が高い。」


「えぇ、本当に。
それにマリーベルが美しすぎるから、あまり目立ってしまうと、他の殿方の目に止まることを心配なさってるのね。独占欲の現れ、いえ、愛ですわね」

どうしたらそんな解釈になるのでしょう?

ダメだ。親バカだった。
この際はっきりと口に出さなければ。


『いえ、そういう事ではないのです。
お父様、お母様、
アーサー様との婚約は辞退させてくださいませ!」

「!」

真顔になったのは一瞬のことだった。

両親はすぐに二人とも顔を綻ばせる。

「マリーベルったら、もうマリッジブルーなのね?」

「マリーベル、アーサー様は素敵な方だ。
何よりこの国の王太子だ。マリーベルもきっと幸せになれる」


「でも、私は……アーサー様のことが苦手なのです」

もう、どうして分かってくれないのでしょう。

自分の気持ちのことは忘れたとしましょう。

貴族の娘としての務めは理解していますっ。

でもでも、このまま私がいずれ王妃になったとしたら、この国の行く末は不安しかありませんよ?

そのことはいずれ我が家の名にも傷がつきます

本当に大丈夫と思っているのでしょうか……

いいえ、それは建前ね、ごめんなさい。

ただ、私、アーサー様と結婚なんて嫌なんです

きっと見抜いているのですねお父様。



「可愛いマリーベル。マリッジブルーは誰しも経験することだから大丈夫よ。
あまり深く考えてはダメ。このお話は今日はここまでね。」

優しく諭すように声をかけてくれるけれど、強制的に会話は打ち切られてしまった。



それから三日後━━。



アーサー様からまたお誘いのお手紙が届いた。

私は王城へと向かった。

いつもの通り応接室へと通される。

アーサー様とのお茶会の時は、侍女達は同席することを許されていない。

給仕の方が来られる以外は、アーサー様と私の二人きりだ。

人目がないので、いつもアーサー様は私に威圧的な態度をとってくる。


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