婚約者候補は辞退させてくださいませっ!

16アーサー✖️ジャクリーン嬢

「やぁ、待たせたかな。」

ジャクリーン嬢は、遠くからみても、どこにいるか一目で分かるような派手な装いだった。

「いつ見ても、眩しい……(装い)ですね。」

私は皮肉めいた言葉を投げかける。

「まぁ、アーサーさま、そんな正直におっしゃっていただき、私嬉しいですわ。
本日はお招きいただきまして━━」

相変わらず、言葉通りに受け取る令嬢だな。
ダメだ。目に毒だ。目がチカチカする。直視するのは忍耐がいるな。これは修行だな。

「アーサーさま。アーサーさま?」

ジャクリーン嬢の話は、全く耳に入ってこない。

「あ、あぁすまない。つい、
(あなたの派手な装いに)
目を奪われて」

ニコリと貼り付けた笑顔を向ける。

よく読み取れば、言葉の間の意味に気づくだろうに。面倒だ。

途端にジャクリーンは赤面すし、扇子で口元を覆い隠す。

「まぁ、アーサーさま、お上手ですこと。
いつでも、アーサーさまのお隣に立てるように、本日のドレスも流行のものにしておりますの。

私は、常に新しいものに敏感ですの。私が流行を作っていると言っても過言ではありませんわ。」

ジャクリーン嬢は、こちらが何か言葉を挟む隙がないくらいによく話す。

自分のことばかりしか、考えていないな。
相手の顔色を窺うこともできないようでは、先が知れている。

それに、私の隣と言うが、二人のバランスなども考えずに一人で目立ちたがるであろうな。

まぁ、隣に立たれたら、こちらの品位を疑われる。

彼女は気づいていないのだろうか。



「最近のことですと、うふふ、自慢をするようですけれど、神殿へちょっとした寄付を致しましたの。
 
寄付と言っても、ちょっとした趣向を凝らしまして、女神像に花束を。うふふ。花束と言っても、普通の花束ではありませんのよ。宝石の花束ですの。うふふ。

素敵じゃありませんこと?ねぇ、アーサーさまもそう思われますでしょ?」

見た目ばかりに拘って、派手なものが大好きで、かなりの浪費家だな。んん?神殿だと? 今神殿と言ったか? 

そう言うえば、そろそろビルが着いた頃だろうか。マリーベルは、どうしているだろうか。

「アーサーさま、それで、私のことが噂になりまして、女神像に贈り物をすることが社交界で流行になっておりますの。うふふ。ですが、私が流行らせたことですのよ」

得意気に話し終えると、ジャクリーン嬢はティーカップを手に取り紅茶を口にする。
 私も一息つこうと、ティーカップに視線を移した瞬間、

「キャッ」

と、どこかわざとらしい
ジャクリーン嬢の声がしたので、視線を向けた。

どうやら、ドレスに紅茶をこぼしたようだった。

「大丈夫ですか?ジャクリーン嬢」

どんな時も冷静な対応を心がけている私は、

ジャクリーン嬢の側に近づくことなく対応する。
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